2008年6月26日 (木)

・「赤朽葉(あかくちば)家の伝説」桜庭一樹

なんとも不思議な小説だ。「山の民」に置き去られた赤ん坊。千里眼を持つ万葉をして育つ。ここらまでは非現実的な話が進むのかと思ったが、やがて物語は、鳥取県からみた日本の戦後史の様相を帯びてくる。次々と戦後のなつかしい事件を背景に話はテンポよく進んでいく。

話したいことが一杯あるのに時間が足りない。慌しく早口で次々と色々なことをしゃべっている人の話を聞いているようだった。落ちつかないし、話が表面的であっという間に終わってしまう。

が、反面小気味よく、飽きることなく読めてしまう。

跡取り息子の生き方、婿養子の行き方、管理売春の話、不良少年・少女の実態、地方に設置されるコールセンターの問題、時代の変化に取り残される職人の問題。欲張り過ぎた話だった。最後は急に推理小説になるところの変でこの作品らしい。

桜庭一樹。初読み。この作品は「第60回日本推理作家協会賞」受賞。2007年上期第137回直木賞候補作品となった。桜庭としては、2007年下期第138回直木賞を「私の男」で受賞している。

<あらすじ>東京創元社HPより

「山の民」に置き去られた赤ん坊。この子は村の若夫婦に引き取られ、のちには製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれて輿入れし、赤朽葉家の「千里眼奥様」と呼ばれることになる。これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。――千里眼の祖母、漫画家の母、そしてニートのわたし。高度経済成長、バブル崩壊を経て平成の世に至る現代史を背景に、鳥取の旧家に生きる3代の女たち、そして彼女たちを取り巻く不思議な一族の血脈を比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編。著者の新たなる代表作、桜庭一樹はここまで凄かった!

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2008年6月19日 (木)

・「阪急電車」有川浩

とてもいいテーマを取り上げた作品だと思う。毎日同じような時刻に電車に乗っているといつも見かける顔、というのができる。気になる女性にも遭遇する。次の駅に着くとお別れと言うには少々寂しい気分になってくることがある。

が、そういう人に声をかけたら、下手をすると騒がれ取り押さえられることになる。電車での出会いが現実の出会いになることは、相当な偶然が重なり合わない限り発生しない。大げさに言うと、人と人の出会いのむなしさを感じてしまう。

「袖触れあうも多生の縁」とはいかないのだ。

出会いのない現代社会の電車の中で、素敵な出会いが小話のように次々と展開していく。地味だけど、夢のような話が続く。

舞台は阪急今津線。宝塚発西宮北口行。宝塚・宝塚南口・逆瀬川・小林・仁川・甲東園・門戸厄神・西宮北口の8駅、各駅停車の運行しかなく所要時間15分。8つの駅がそれぞれ1章になっている。途中下車する駅もあれば、駅と駅の間の出会いが描かれていることもある。各章で主人公が異なる。前の章で脇役人が主人公になり、主人公だった人は下車していく。そして新たな脇役が乗車して、微妙に各登場人物が重なり合う。

西宮北口に着いた電車は、再び宝塚に向かって折り返す。折り返し後は、前半の話の後日談の様相。映画や小説の続編のようだ。続きが知りたいという欲望を満たしてくれる。が、多くの続編にありがちな少々の失望感があったこと否めない。

「阪急電車」のタイトルにやられた。しかも舞台は今津線。関西出身者である私にとってとても懐かしい、郷愁の念がわく舞台だ。ついつい友人に「読んだ?」とメールしてしまった。

<主な登場人物>

・図書館でお互い意識していた社会人の男女。図書館帰りに宝塚駅で、偶然か必然か同じ電車にのり会話がはじまる。

・「同僚の女性に彼氏を寝取られた女」として当人たちの結婚式にでる怨念のOL。阪急電車での出会いで穏やかな心を見つけていく。

・孫娘と乗ってきた元気なおばあちゃん。主人とは死別。息子夫婦とは別に暮らし、自由を謳歌している。電車の中での一言が若い女性たちを救っていく。

・イケメンだが切れやすいだめ男とその男に献身的に仕えるし彼女。

・意外にしっかりした女子高生

・地方出身者同士の大学生男女出会い

・やりたい放題のおばちゃんの集団にいやいや入っている気弱な女性の目覚め。

<参考>

阪急今津線は宝塚から今津まで。線路は西宮北口で一旦遮断され、小説の舞台となった北の部分が今津(北)線。西宮北口・阪神国道・今津の間が今津(南)線になっている。私が学生のころは、南北に分断されておらず、西宮北口で神戸線と平面交差していて、鉄道マニアにはこたえられないスポットだったようだ。

西宮北口は、梅田(大阪)と三宮(神戸)の中間駅。我が阪急ブレーブスのホームグランド西宮球場があった。

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2008年4月23日 (水)

・「花の回廊」流転の海 第五部 宮本輝

宮本輝の父をモデルに、自身のルーツを書き綴った「流転の海」シリーズ。

第一部 流転の海 1984年

第二部 地の星  1992年

第三部 血脈の火 1996年

第四部 天の夜曲 2002年

第五部 花の回廊 2007年

抽象的であまりに周辺の小さな話題をとりあげた若手作家の作品を続けて読んだ後に、物語の展開がしっかりしたこういう小説に接すると、ほっとする。はやり小説はこうでなきゃ。

宮本輝は物語の構成・展開のうまい作家だと思う。競走馬をめぐる生産者・馬主・調教師・騎手などを描いた「優駿」は私の宮本輝ベストだ。

さて、「流転の海」シリーズ。宮本輝のお父さんをモデルに自身の存在の根源を探っていく話。宮本輝版「青春の門」。第一部が発刊されたのが、1984年。20年以上も前。前作からも5年。さすがに話も骨格程度しか覚えていない。四部までを読んでなくても充分楽しめるものの、前作までの話を前提に記述されているところもある。もう少し間隔を詰めて発刊してほしい。「青春の門」も完了したら読み直そうと思っていてそのままになっている。そもそも「青春の門」は終わったのだろうか。

この「花の回廊」の次の展開を暗示して終わっている。海老原太一の領収書代わりの名刺。美貌の中学生の津久田咲子。熊吾と男女の関係に発展していくのだろうか。

小学生の伸仁。熊吾の妹宅に預けられる。妹宅といっても安アパート、欄月ビル。

在日朝鮮人問題、給食のパンの残りと夕刊売りで得たわずかなお金で食べるたこ焼きで飢えを凌ぐ兄弟。この時代の社会の底辺で格闘する人々が強烈に描かれている。

このシリーズの中で一番面白かった。

出版社 / 著者からの内容紹介

昭和32年、財産を失った松坂熊吾は、電気も水道も止められた大阪・船津橋のビルで、来る自動車社会を見据えた巨大モータープールの設立に奔走し、妻の房江は小料理屋の下働きで一家を支える。一方、小学生の伸仁は尼崎の貧しいアパートに住み、壮烈な人間ドラマの渦に巻き込まれていく。大河小説の最高峰「流転の海」シリーズ最新作

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2008年4月18日 (金)

・「高血圧の常識はウソばかり」桑島巌

昨年の秋の健康診断で軽い高血圧と診断され、あたかもダイエットを楽しむような感覚で血圧を下げることに取組んでいる。以下のメモはこの本の中から知識として(本音はうんちくのネタとして)記録しておきたいものを抜粋したものである。

・「脳卒中」・「心臓病」・「腎臓病」はいずれも「血管病」で主な原因は高血圧。

「脳卒中」は「脳出血」と「脳梗塞」に大別される。

「脳梗塞」は「脳血栓」と「脳梗塞」に大別される。

⇒「脳出血」:脳の血管が破れる

⇒「脳血栓」:動脈硬化で狭くなった血管に血栓が詰まる

 ⇒「脳梗塞」:心臓から血栓が飛んできて詰まる

 「心臓病」は「狭心症」と「急性心筋梗塞」に大別。

⇒「狭心症」:冠状動脈が狭くなるため起きる

⇒「急性心筋梗塞」:詰まって血液が行きとどかなくなる

・血圧は低ければ低いほど「血管病」になりにくい。

60歳を過ぎると下の血圧は低くなる。

・上の血圧は年齢とともに高くなる。

・上の血圧-下の血圧=脈圧

 脈圧は小さいほうがいい。

・利尿薬はナトリウムを尿から排泄させる。

・高血圧にならないために

⇒全身を使う運動

⇒塩分は1日6g以下

 ナトリウムの2.5倍が塩分

⇒水の飲みすぎは高血圧によくない

⇒カリウムはナトリウムを体から押し出す

 リンゴやみかんに多く含まれている

・風呂場は危険がいっぱい

 ⇒浴室とお湯の温度の差を減らす

  厚いシャワーで浴室を暖める

 ⇒食後の入浴は避ける

<関連記事>

200848日 「高血圧との長い戦いの始まり その2」

http://yamaken38.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/post_ec7e.html

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2008年4月 9日 (水)

・「もう一言の極意」林文子

ダイエーの取締役副会長の林文子著。高校卒業後事務職として働いた後、結婚を契機に

BMW ジャパンへ転職。営業職として驚異的な成績をあげ、社長まで登りつめた。その実績を買われダイエー再建を委ねられる。

その営業の神様が人間関係構築には、もう一言が必要だと訴えている。当たり前の事ばかりだが、改めて思いめぐらせると、ちょっと気をつけてみようと思うことが結構あった。

下記に書き出してみた。

02は「2008年今年の目標」で「プラスワンストローク」として書いたことと同じだ。人間関係構築の基本のようだ。

12もなかなか深い。

01.どんなときも笑顔を習慣づける

  ⇒笑顔を惜しんではいい人間関係はつくれません

02.「おはようございます」プラス「特別な一言」で印象は大きく変わる

  ⇒一瞬動きを止めて挨拶

03.どんな忙しいときでも、いきなり仕事の話へは入りません

04.「自分の情報」を出せば相手は言葉を返してくれる

  ⇒会話の主導権は徐々に相手に渡す

05.「ポジティブは言葉」は不思議な力を持っている

06.出会ってすぐに相手の良いところを見つけ、それを自然に言葉に出す

07.別れぎわにも「もう一言」

  ⇒最後に「相手の心が喜ぶ一言」を残す

08.別れ際に何か一言具体的にお礼を言う

09.相手の自信のあるポイントをほめる

 「ほめぐせ」をつけることが大切

  ⇒「内心ちょっと自信を持っているところ」をすかさずほめる

10.断るときには感謝の言葉を添える

11.「ほめる力」は叱るときにこそ光る

  相手のいいところをほめてから叱る

  ⇒怒ってしまったら何もかも台無し

12.自分20%、相手が80% これが感じのよい会話のバランス

  ⇒聞き上手は「話せるヤツ」と思われる

<関連記事>

200811日 「2008年今年の目標http://yamaken38.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/post_7368.html

<関連記事>

2007616日 「人のいいところを見つけるhttp://yamaken38.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/post_2187.html

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2008年4月 3日 (木)

・「浮世でランチ」山崎ナオコーラ

二つの話が交互に展開する。

25歳のOL君江は、会社での人間関係が煩わしくてランチはコンビニで買った弁当を一人公園で食べている。会社は辞めることに。

もうひとつの話は、君江が中学生の頃の話。幼馴染みの犬井はミヤンマー人の母と日本人の父を持つ登校拒否児。その犬井を君江は学校へ誘う。なぜかその犬井。いじめにあう君枝を守ってくれる。やがて同級生数人と犬井の家で宗教ごっこが始まる。

一体何を目的にこの君枝の中学生生活を描いているのだろう。と、思い始めた頃に話はOLの君枝に戻る。

会社を辞めた君枝は東南アジアの旅行へ出かける。旅先でもエピソードの描き方はきめ細かく上手い。が、一体何の話?。山崎ナオコーラの旅行記かな?と、疑念がわいたころに再び中学生の頃へ。

昨年の今頃、国際ボランティアのために今の会社を辞めていった派遣社員のことを思いだした。

<あらすじ>河出書房新社HPより

明日の私は、誰とごはんを食べるの? ――丸山君枝は25歳のOL。何も起こらない日々から旅立ち、日常に戻った君枝が触れた、一瞬の奇跡とは? 人と人が関わる意味を問う文藝賞受賞第一作。

<関連記事>

200833日 「「カツラ美容室別室」山崎ナオコーラ」

http://yamaken38.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/post_431e.html

2007228日 「ハケンの未来」

http://yamaken38.cocolog-nifty.com/blog/2007/02/post_52de.html

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2008年3月19日 (水)

・「あなたの呼吸が止まるまで」島本理生

舞踏一筋の父親に愛想をつかし母親は家を出て行った。父親は残された娘を大事にはしてくれるけれど、人生の第一は舞踏。そんな寂しさを、物語を書くことで埋めていく小学6年生、野宮朔。父親の舞踏仲間との交友もあり、十分大人である。学校では当然のように浮いてしまう。転校生の鹿山さんも物事をはっきり言い過ぎてクラスで浮いている。朔と鹿山さんは仲良くなる。そして素朴な同級生田島君とのほのぼのとした交際と鹿山さんとの微妙な三角関係。一方で、父親の舞台のチラシ作成者で年の離れた兄のような存在の佐倉に頼る気持ちもうまく描かれている。

おませな女の子の微妙な思春期の話として充分楽しんでいたのに、最後とんでもない展開となる。朔が性的暴力を受ける。その事件のプロセスで信頼の情が、嫌悪の情に変わってところの描写はきめ細かい。

朔は宣言する。物語を書く人になりたい。今回の事件を周りの人には誰かわかるように何十年後になっても物語として書く。と。

急に重い話になって、暗いものを読者に与えて終わってしまう。島本理生の母親は舞踏家で、母子家庭。この話は実話ではないかと思わせる。仮に実話だとすると、島本の復讐に我々読者が付き合わされたことになる。いい迷惑ではないか。

創作だとすると、インパクトのある話にするための仕掛けということか。

創作か実話か考えさせることを狙ったものか。まんまと作者の思う壺にはまってしまっている。

島本理生  1983年生まれ

青山七恵  1983年生まれ

金原ひとみ 1983年生まれ

綿矢りさ  1984年生まれ

島本は史上最年少の芥川賞受賞かと騒がれたが、過去3回候補にあがっているが芥川賞はまだ受賞していない。同世代の3人に先を越された形になっている。

<あらすじ> Amazon.cojp より

十二歳の野宮朔は、舞踏家の父と二人暮らし。夢は、物語を書く人になること。一風変わった父の仲間たちとふれ合い、けっこう面倒な学校生活を切り抜けながら、一歩一歩、大人に近づいていく。そんな彼女を襲った、突然の暴力。そして少女が最後に選んだ、たった一つの復讐のかたち――。『ナラタージュ』から二年、新たな物語の扉が開く。

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2008年3月 3日 (月)

・「カツラ美容室別室」山崎ナオコーラ

平成19年下期芥川賞候補作品。作者の「人のセックスを笑うな」も平成16年下期芥川賞の候補作品。題名も個性的だが、「ナオコーラ」という名前も奇妙だ。コーラ好きらしい。

27才のサラリーマン、淳之介。どういうわけかその友人で小卒の就職経験のない32才の梅田さん。淳之介は梅田さんが常連の「カツラ美容室別室」の花見に誘われるところから物語が始まる。美容室は47才の桂さんと27才のエリと24才の桜井さんで切り盛りしている。本店は九州でお母さんが経営している。

話は次の花見までの1年間のまったりした展開。淳之介とエリはデートまでは行くがそれ以上は発展しない。青山七恵の「ひとり日和」のような淡々とした日常が描かれている。が、退屈はしない。

淳之介とエリ。案外今の若者、とりわけ、なかなか女性と付き合うことができない若い男の心情をよく描いているのではないだろうか。作者は女性なのだが。

エリからのメールは、相手からの返事よりも間隔をあけて出す。お互いそうしているうちに間隔がどんどんあいていく。「お互い大人なのだから、テンションの上がらないままにつき合いをスタートさせてもいいのではないか、と考えながら眠った。」

もう少しでそういう関係になれそうなのにブレーキをかけてしまう。「一ヶ月以上合わないでいると、エリへの気持ちが発酵していく。恋愛感情、ではない。知り合いへの。深い情に。」

そのうち、「疲れる女といるよりも、アパートで牛乳を温める方がいい。」となってしまう。

<あらすじ> Amazon.cojp より転記

こんな感じは、恋の始まりに似ている。しかし、きっと、実際は違う。 カツラをかぶる店長・桂孝蔵の美容院で出会った、淳之介とエリ、梅田さんたちの交流のゆくえは? 大人の事情、大人の友情に迫る。各紙絶賛、話題の最新作!

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2008年2月27日 (水)

・「イグアナくんのおじゃまな毎日」佐藤多佳子

佐藤多佳子は、昨年の2月にこのブログを開設してから読み始めた作家なので、読んだ佐藤作品はすべて読書記録が残っている。

<読んだ佐藤多佳子作品> 読んだ順

「一瞬の風になれ」2006

「しゃべれどもしゃべれども」1997

「黄色い目の魚」1993

「サマータイム」1989年 デビュー作

「九月の雨」  1990

「イグアナくんのおじゃまな毎日」1997

今回読んだイグアナくん。50歳を過ぎたおじさんが読むにはちょっと無理があったかもしれない。でも樹里の奮闘記は楽しかった。孫娘を見守る感覚とはこんなものかなとも思った。憧れのクラスメイトの日高君への思いもほほえましい。

私の孫娘の誕生はいつ頃だろう。会えるだろうか。

第38回日本児童文学者協会賞、第21回路傍の石文学賞作品。

<あらすじ> Books より転記

樹里が誕生日プレゼントにもらったのは、生きている恐竜イグアナ。世話がたいへんなうえに成長すると2mにもなるという。

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2008年2月18日 (月)

・「名もなき毒」宮部みゆき

今さら、宮部みゆきに勲章はいらないと思うが、この作品は2007年の吉川英治文学賞を受賞している。「誰か」に続く<杉村三郎>シリーズの第二作。

愛犬と散歩中の老人が、その途中に寄ったコンビニで買ったウーロン茶を飲んだ直後に死んでしまう。青酸カリが混入していたからだ。被害者の娘(シングルマザー)と孫娘(高校生)。犯人と疑われる娘と、母に反発しながらも気遣う孫娘。

もうひとつの物語の柱は、杉村三郎の所属する社内報編集室をトラブルで退社したアシスタント原田いずみ。退社後も執拗にクレームをつけてくる。

この二つの人たちを中心に、元刑事の私立探偵と人気ルポライターと杉村三郎の妻と娘がからみ事件の謎解きが進められていく。

宮部みゆきだから、はやりミステリー仕立てにしないといけないのであろうか。

日常を普通に生きていると、この世に蔓延している見えない毒(現代社会のいろいろな問題)に侵食されていく。宮部みゆきの世界は皆いい人で、この毒を解毒していく。

無差別犯罪の問題、介護の問題、老人の生活費の問題、アレルギーの問題、他人を異常に攻撃しないと生きていけない人の問題、成功者の虚無感など大きな問題を穏やかに描いている。

深刻な話なのにゆったりとしたとした気分にさせてくれた。そう複雑でない謎解きを無理に挿入する必要はないと思う。

<あらすじ> Books より転記

どこにいたって、怖いものや汚いものには遭遇する。それが生きることだ。財閥企業で社内報を編集する杉村三郎は、トラブルを起こした女性アシスタントの身上調査のため、私立探偵・北見のもとを訪れる。そこで出会ったのは、連続無差別毒殺事件で祖父を亡くしたという女子高生だった。

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2008年2月13日 (水)

・「モルヒネ」安達千夏

すべり出しはすごい話かなと感じさせた。どんな展開になるのだろう、と引き付けられた。

小学6年生の姉と2年生の妹。母は自殺してこの世にはいない。父は遠距離通勤のためめったに帰ってこない。たまに家に帰ると子供に暴力を振るう。ある日父に脚を蹴られ、後ろに倒れた姉。翌朝妹が姉を起こそうとするが起きない。

姉は亡くなり、父は逮捕され、妹は施設へ。その妹である真紀はやがて医師夫妻の養女となり、自身も医者になった。母や姉のところへ行くにはその手段を持つ医者が一番いいと。

ここまではこの小説の導入。読んでいて緊張してくる。

が、後がいけない。婚約者で真紀が勤める病院の院長ほか登場人物は、それぞれ味のある人たちで、病院での話もおもしろい。

でも、死に直面したかつての恋人に惹かれる真紀。理解に苦しむ。元恋人との関係だけが妙に浮き上がった話になっている。作者が表現したかったのは、ここだったかもしれないが、難解な恋愛小説になり、少々退屈だった。

<あらすじ> Books より転記

在宅医療の医師・藤原真紀(ふじわらまき)の前に、元恋人の倉橋克秀(くらはしかつひで)が7年ぶりに現われた。ピアニストとして海外留学するため姿を消した彼がなぜ? 真紀には婚約者がいたが、かつて心の傷を唯ひとり共有できた克秀の出現に、心を惑わせる。やがて、克秀は余命三ヶ月の末期癌(がん)であることが発覚。悪化する病状に、真紀は彼の部屋を訪れた。すばる文学賞作家が描く、感動の恋愛長編!

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2008年2月 2日 (土)

・「空飛ぶタイヤ」池井戸潤

三菱自動車のリコール隠し事件をモデルに描かれ、平成18年下半期の直木賞候補になった作品。その時の直木賞は「該当なし」という結果になったが、佐藤多佳子「一瞬の風になれ」、北村薫「ひとがた流し」、荻原浩「四度目の氷河期」など力作が並び,票が割れたものと思われる。

取材力と創造力がすごい。

かなり細かい情報収集をしている。モデル小説だからここらが命である。作者はこの小説舞台になる銀行の元行員で、銀行の描写はさすがである。

そうした情報を元に話を組み立てて行く。それぞれの立場で事故と立ち向かったり、問題に目をつぶったり、日常で起こりうるテーマばかりだ。長い小説につきものの中だるみもない。最後まで飽きさせることなく読ませてくれる。読み物としてはお勧めである。

でも、なにか引っかかる。何でも評論家気取りでけちをつける必要はないのだが。

ベースにできる実話があるのだから、物語の展開を考えるのは楽だ。かなり精緻に取材していると思うが、小説にしてしまうのだから多少間違いがあっても問題はない。モデル小説は何かプラスアルファーがほしい

水上勉の「飢餓海峡」や高村薫の「レディー・ジョーカー」のように実話は単なる材料で後は作家が自ら世界を作り出す。そういったもう少し独自性というか独創性がほしかった。桐野夏生の「グロテスク」・「残虐記」はやり過ぎだが。

PTAの片山。会社でも家でもこういう女性には勝てない。

勝気で負けん気が強い。自らの要求レベルと実力のギャップに苛立ち、その矛先を他人に向け、とにかく相手を攻撃することによって自分を守っていく。都合の悪い話は「聞いていない」、「関係ない」とわめく。おとっと。そんな愚痴を言う場ではなかったようだ。

<あらすじ> Books より転記

トレーラーの走行中に外れたタイヤは凶器と化し、近くを歩く母子を襲った。タイヤが外れた原因は整備不良なのか、それとも……。自動車会社、銀行、警察、被害者の家族タイヤ母子死傷事故に関わった人それぞれの苦悩。そして、「容疑者」と目された小さな運送会社の社長が、家族・仲間のために、たったひとつしかない真実に迫る、試練と格闘の数か月! 「命」と「カネ」の人間群像、そして、巨大企業が犯した「罪」と「罰」を描く傑作企業小説。

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2008年1月22日 (火)

・「あなたに似たひと」澤地久枝

昨年、向田邦子の「父の詫び状」を再読した。その中で澤地久枝と南米旅行した時の話があり、澤地久枝を思い出した。25年ぐらい前に読んだ本をもう一度読んでみようと思った。その本は「愛が裁かれるとき」だったのだが、間違って「あなたに似たひと」を読んでしまった。

よって初読である。

1977年に出版され、「11人の女の履歴書」という副題がついている。著者が後書きで「女なら誰でも通らざるを得ない人生での出会い。そのごく平凡な日常的な出来事をどう生きてきたかという女の智恵―。だからあなたに似た女の、あるいはこれからあなたがめぐりあうであろう出会いとよく似た人生の、秘めた物語として読んでいただければと思っています。」と記している。

が、どの話も劇的でごく平凡とは言えない。ただ、そんなぎりぎりのところで女の人生を生きてきた人は他にも大勢かつ身近にもいるように思えるし、誰もが一歩間違うとそんな人生になる、とも思わせた。

11人。25年前に澤地が関心を持って取材した11人。ほとんど知らない。

01.榎本美佐江 02.浅香光代  03.高杉早苗

04.マダム路子 05.長嶺ヤス子 06.胡暁子

07.エリザベス寺岡  08.石牟礼道子

09.澤田美喜  10.壇より子  11.大宅昌

浅香光代はミッチー。壇より子は壇ふみの御母さん。大宅昌は大宅映子の御母さん。

特に胸を打ったのが次の3人

1.エリザベス寺岡。

第二次世界大戦の末期、外交官寺岡がハンガリーに赴任。ハンガリー人エリザベスは寺岡と恋に落ち結婚。後に料理家となるバーバラ寺岡を生む。戦後夫の母国日本へ。が、夫は肺がんで亡くなってしまう。母国は共産化されエリザベスは娘と日本で生き抜いた。

2.石牟礼道子

有機水銀公害水俣病を地元住民の立場から描いた「苦海浄土 わが水俣病」の作者で、公害告発の運動家でもあったようだ。この作品第1回大宅壮一ノンフィクション賞を受けたが辞退したそうだ。読んでみたい。

3.澤田美喜

戦後日本で、進駐した米軍兵と日本人女性の間に子供が生まれ、米軍兵が帰国してしまって子供を抱え生活に困った女性から子供を引き取って育てた女性らしい。そのためにエリザベス・サンダースホームを開設。2000人近い混血孤児を育てたとのこと。

そのような社会問題があったことは知らなかった。

<関連記事>

20071210日 「父の詫び状」向田邦子 <再読>」

http://yamaken38.cocolog-nifty.com/blog/2007/12/post_6a87.html

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2008年1月 9日 (水)

・「ドミノ」恩田陸

恩田陸といえば、「夜のピクニック」。「夜ピク」の後、続いて恩田陸作品を読もうと何がいいか調べてみると恩田陸はSF、ミステリー作家ということに気づいた。私にとって、推理小説は松本清張、高村薫、宮部みゆき限定なのだ。つまりあまり好きではない。

ということで、「夜ピク」の後恩田陸は敬遠していたが、「ドミノ」は書評などで面白いという評判だし、あまり推理小説ぽくなさそうなので、読んでみた。

表紙を開くと東京駅の地図。さらにめくると登場人物の紹介がイラストとともに簡単に記されている。27人と一匹。この地図と人物一覧がないと読むのはちょっと大変。的確な挿入だ。

28人もの登場人物がいるのに、一覧表で一度確認すると後はごちゃごちゃになることはない。それぞれしっかりした個性を持っているためだ。ここらは恩田の技量なのだろう。

これだけの出番ではもったいない人々ばかりだ。

話もおもしろい。でも。

「夜ピク」とは当然異なる分野。それを覚悟(?)で読み始めたのだからそれはそれでいいのだけど。「OUT」の後、桐野夏生の作品を読む毎にしっくりこなかった、あれかな?

<あらすじ>

Amazon.co.jp より 転記


7月のある蒸し暑い午後、営業成績の締め切り日を迎え色めき立つ生命保険会社から、差し入れ買い出しのためにOLが東京駅に向かって走りだす。ここを物語の出発点として、ミュージカルのオーディションを受ける母娘、俳句仲間とのオフ会のため初めて上京した老人、ミステリーの会の幹事長のポストを推理合戦によって決めようとする学生たち、従妹の協力のもと別れ話を成功させようともくろむ青年実業家、訪日中のホラー映画監督など、さまざまな人間が複雑に絡みあうなかで、物語は日本中を揺るがす大事件へと発展していく。

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2007年12月21日 (金)

・今年読んだ本

今年読んだ本は、今日現在で28冊。年賀状書きもあるので最終はまあ30冊といったとこだろう。このブログを始めた動機のひとつに、読んだ本の記憶が年とともにすぐ薄れてくるので、備忘録的に記録しよう、ということであった。

読んだ本、すべて記事を書いたわけではないが、振り返ってみるとその効果が出ている。回顧趣味的かもしれないが、もう一度その時の感動(?)を再現できるのはいいことだと思う。人生において自分自身で経験できることは限られている。それをいろいろな世界を疑似体験できる読書は魅了的だし、その感動をなんども味わえるのもうれしいことだ。

普通の人にとって、感動の反芻は人生の醍醐味と思う。

例年1年で読む本は40冊から50冊程度。顔面神経麻痺にかかって夏にあまり本を読めなかったこともあるが、今年読書冊数が減った最大の原因はこのブログだ。

逆説的だが、このブログを書いたり、他の人のブログを読んだりに時間をとられて本を読む時間が減ってしまったのだ。

本末転倒。まあ、それはそれでいいことだけど、来年は少し考えよう。

私にとって今年は佐藤多佳子の年だった。

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2007年12月10日 (月)

・「父の詫び状」向田邦子 <再読>

「始めて現れた、“生活人の昭和史”」(矢沢永一)

「向田邦子は突然あらわれてほとんど名人である」(山本夏彦)

と言われた向田邦子。出版社勤務から放送作家。そして随筆家・小説家へと転じていった。

向田邦子の随筆はまさに名人芸。どの話もついつい引き込まれていく。話の内容はそう変わったものはない。誰でも経験しそうな話ばかりである。子供の頃の生活風景。子供から見た大人の世界。日々の生活での出来事。すべて日常のありふれたささやかな出来事である。