・「オリンピックの身代金」奥田英郎
1964年。昭和39年。私が小学校高学年の時に東京オリンピックは開かれた。奥田英郎は昭和34年生まれ。5歳。かすかな記憶がある程度だろう。そこは作家。見事に当時の日本の空気を描いている。作家にかかれば、戦国時代でもあたかも自身が体験したかのように描けるものではあろうが、実際にリアル体験した人が多く世の中にいる時代を描くのは勇気がいったことだと思う。
東京大学大学院生島崎国男が、出稼ぎ労務者であった兄の死をきっかけに、戦後復興のシンボルであったオリンピックの影で、まだその復興の恩恵を受けていない農村や工事現場の底辺の人の生活実態を知るに至り、オリンピックの開会式を人質にして身代金を奪おうとする話だ。
全編通じての主人公は島崎であるが、この小説は56章から構成されている。各章ごとに主役が変わり、ひとつの出来事が複数の目で描かれている。この手の構成の小説は最近多いが、成功するには各章を短くすることだ、と私は思っているので、この小説は○の評価になる。
第1章は昭和39年8月22日。後でわかるのだが、第1章はこの話のかなり佳境の時期から始まっている。4章で7月13日の話の始まりまで戻る。各章ごとに主役もかわり日付も前後するが、あまり混乱はしない。それが効果的に聞いてくる面もある。できれば、メモを用意して、各章の日付と出来事を記録しながら読めばもっと作者の思惑がわかったかもしれない。
日雇い労務をしながら、国を脅迫するきっかけが直接描かれていなくて、突然話が大きくなった感じがしたが、そこはわざと読者に考えさせようとしたのだろうか。
暴力団や過激派学生まで、オリンピックに協力して成功させようとした時代の空気はたしかにそうだったのであろう。2016年の五輪ははやり同じ空気を感じさせたリオでよかったと思った次第である。
オシムが初来日して、感激した日本人の素朴なホスピタリティは今どうなってしまったのだろうか。
初奥田英郎は読み応えがあった。
<角川書店HPより>
昭和39年夏、オリンピック開催に沸きかえる東京で警察を狙った爆発事件が発生した。しかし、そのことが国民に伝わることはなかった。これは一人の若者が国に挑んだ反逆の狼煙だった。著者渾身のサスペンス大作!
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2009年10月03日 「2009年10月3日(土) 東京五輪ならず」
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2009年1月05日 「サッカー オシムよさらば」
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