・「あなたの呼吸が止まるまで」島本理生
舞踏一筋の父親に愛想をつかし母親は家を出て行った。父親は残された娘を大事にはしてくれるけれど、人生の第一は舞踏。そんな寂しさを、物語を書くことで埋めていく小学6年生、野宮朔。父親の舞踏仲間との交友もあり、十分大人である。学校では当然のように浮いてしまう。転校生の鹿山さんも物事をはっきり言い過ぎてクラスで浮いている。朔と鹿山さんは仲良くなる。そして素朴な同級生田島君とのほのぼのとした交際と鹿山さんとの微妙な三角関係。一方で、父親の舞台のチラシ作成者で年の離れた兄のような存在の佐倉に頼る気持ちもうまく描かれている。
おませな女の子の微妙な思春期の話として充分楽しんでいたのに、最後とんでもない展開となる。朔が性的暴力を受ける。その事件のプロセスで信頼の情が、嫌悪の情に変わってところの描写はきめ細かい。
朔は宣言する。物語を書く人になりたい。今回の事件を周りの人には誰かわかるように何十年後になっても物語として書く。と。
急に重い話になって、暗いものを読者に与えて終わってしまう。島本理生の母親は舞踏家で、母子家庭。この話は実話ではないかと思わせる。仮に実話だとすると、島本の復讐に我々読者が付き合わされたことになる。いい迷惑ではないか。
創作だとすると、インパクトのある話にするための仕掛けということか。
創作か実話か考えさせることを狙ったものか。まんまと作者の思う壺にはまってしまっている。
島本理生 1983年生まれ
青山七恵 1983年生まれ
金原ひとみ 1983年生まれ
綿矢りさ 1984年生まれ
島本は史上最年少の芥川賞受賞かと騒がれたが、過去3回候補にあがっているが芥川賞はまだ受賞していない。同世代の3人に先を越された形になっている。
<あらすじ> Amazon.co.jp より
十二歳の野宮朔は、舞踏家の父と二人暮らし。夢は、物語を書く人になること。一風変わった父の仲間たちとふれ合い、けっこう面倒な学校生活を切り抜けながら、一歩一歩、大人に近づいていく。そんな彼女を襲った、突然の暴力。そして少女が最後に選んだ、たった一つの復讐のかたち――。『ナラタージュ』から二年、新たな物語の扉が開く。
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