単行本「サマータイム」には
①「サマータイム」(四季のピアニストたち・上)
②「五月の道しるべ」 が
単行本「九月の雨」には
③「九月の雨」(四季のピアニストたち・下)
④「ホワイト・ピアノ」 が収納されている。
4つの中篇は、それぞれ独立した物語にもなっているが、進、佳奈、広一、広一の母と
ピアノ、自転車をキーワードに、全体でもひとつの物語を構成している。
「サマータイム」(夏)
進が小学5年生。姉佳奈が小学6年生。二人の友人広一が中学1年生の夏に「サマータイム」が始まる。どしゃぶりの雨の日、プールで進は交通事故で父親と左腕とピアニストになる夢を失った広一と知り合い、広一に惹かれる。
やがて広一と奇抜でわがままで、息を飲むほどキレイな佳奈の小さい恋も生まれる。
佳奈は事故の後、自転車に乗れなくなった広一に自転車にのれるように手伝うがうまくいかない。
やがて、広一は引越していく。進はピアノを習い始める。そして話は飛んで3人はそれぞれ成長して、6年後に再会。他の3篇のとりまとめのような作品。
「五月の道しるべ」(春)
佳奈が小学校1年生の時に、ピアノが届き、弟の進には自転車が。佳奈はピアノが嫌いで両親に抵抗する。「サマータイム」と同じ話を進の姉の目で語る形なのかと思ったが、そこまで行かずに話は終わってしまう。この一連の話の中で重要な位置を占めるピアノと自転車が登場する。佳奈の気質の紹介のような小品。
「九月の雨」(秋)
広一が高校1年生になっている。広一と新しく父親になる種田との出会いと小さな戦い。
広一の母は、夫を失った後、夫の面影のある男性と次々恋し、次々破綻する。やがて夫とは異なるタイプの種田と出会う。広一は、種田と葛藤しながらも種田に心を開いていく。種田の手助けで乗れなかった自転車に乗れるようになる。そして、未練のあったピアノをきっぱり止める。この話の顛末はサマータイムの後半に語られる。
「ホワイト・ピアノ」(冬)
佳奈と26歳のピアノ調律師千田との出会い。14歳の彼女は、2年前の広一への思いが捨てられない。でも千田には、「私は、十四じゃなくて二十四歳だったら、センダくんのお嫁さんになってもいいと思う。好きとか恋とか、そんなんじゃなくて、ただなんとなく、そう思うの。」という思いを持っている。
好きなのと、ずーとそばに居たいは違うのかも。女の子はそう思うのかな。
人との出会いが、自分に戻ってきて成長させる。
「サマータイム」はジャズのスタンダート。
「九月の雨」は古い映画の主題歌。
<佐藤多佳子>
「サマータイム」1989年 デビュー作
「九月の雨」 1990年
「黄色い目の魚」1993年
「しゃべれどもしゃべれども」1997年
「一瞬の風になれ」2006年
「一瞬の風になれ」がブームにならなかったら、私は読むことのなかった素晴らしい作品の数々。これも出会いの不思議さかもしれない。